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ベトナム政治局、省エネ目標を各産業・地域に義務化へ

  • 執筆者の写真: KBC-LINK Editor
    KBC-LINK Editor
  • 9月5日
  • 読了時間: 3分

ベトナム政治局は、国家エネルギー安全保障と温室効果ガス削減のため、各産業や地域ごとに省エネ目標を義務化し、設備・機械・建築物に対してエネルギー基準を適用する方針を示しました。これにより、ベトナムは2050年までの「ネットゼロ*」目標に向け、大きな一歩を踏み出します。 

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政治局は、2045年までの国家ビジョンと決議70号に基づき、2030年までに以下を達成する目標を掲げています。 

  • エネルギー消費の8~10%削減(現状維持シナリオ比) 

  • 温室効果ガス排出量の15~35%削減 


これにより、送電網の負担軽減や資源の効率的活用を進め、2050 年のカーボンニュートラル* 達成に貢献します。 

 

主なポイント 

  • 必須省エネ目標の導入:産業、分野、地域ごとに具体的な目標を設定 

  • 技術基準の整備:機械設備、輸送手段、建築物に省エネ基準を適用し、低効率・高排出のものを段階的に排除 

  • 輸送部門:自動車・バイクの燃費表示とエネルギーラベルを義務化。ハノイとホーチミン市では 2027 年から排ガス試験を開始予定 

  • 建築物:年間 200 ~ 300 TOE** 規模のエネルギー消費建築物には省エネ対策を義務化 

  • 炭素市場の整備:炭素税導入、炭素排出制限、クレジット取引メカニズムを構築。年内に試験運用予定 

 

さらに、政治局は企業に対し、炭素回収・貯留・再利用技術( CCUS )の導入や、高性能技術への投資、民間・外国資本の積極活用、ODA や JETP(公正エネルギー移行パートナーシップ)の活用を推奨しています。 

 

背景と変化 

従来の決議 55/2020では、省エネ基準の適用範囲は鉄鋼やセメント製造などエネルギー多消費産業に限定されていました。今回の決議 70 号では、輸送や建築分野を含む幅広い領域に基準が拡大され、強制的な規制と責任の明確化が進んでいます。 


*「カーボンニュートラル」と「ネットゼロ」はよく似た言葉ですが、意味に違いがあります。

  • カーボンニュートラル:人間活動で排出される二酸化炭素(CO₂)を、植林や吸収技術で差し引きし、実質ゼロにすること。

  • ネットゼロ:CO₂ だけでなく、メタンや一酸化二窒素など温室効果ガス全体を対象に、排出量と吸収量を差し引きしてゼロにすること。

例えるなら:

  • カーボンニュートラル = 「炭酸飲料の砂糖( CO₂ )だけをゼロにする」

  • ネットゼロ = 「飲み物に含まれるすべての甘味料(温室効果ガス)を合計でゼロにする」


**1年間に原油 200 ~ 300 トン分に相当するエネルギーを消費していること。原油 1 トン( 約 1,000 リットルちょっと )で、家庭の電気を 1 年分( 平均的な家庭 4 ~ 5 軒 )まかなえるぐらいのエネルギー。

【KBC-LINKの視点】 

  • 日系および海外企業にとって:省エネ機器や環境技術の需要拡大が予想され、進出・投資の好機となり得る。 

  • ベトナム企業にとって:省エネ基準の遵守はコスト増要因となるが、長期的には競争力強化につながる可能性あり。

  • 政策面では:炭素市場の早期整備がカギ。特にエネルギー多消費産業の対応力が試される。


【出典】 


【編集】 

KBC-LINK編集部

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