top of page

🇻🇳 KBC-LINK 経済・産業レポート

  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

ベトナム・トー・ラム政権下のガバナンス改革:全産業で進む「例外なきインスペクション」と、移行期に備えるビジネスの視点


はじめに(やさしい要約)

今、ベトナムでは国を挙げた大規模な改革が進んでいます。その影響は医療・ヘルスケアにとどまらず、建設、消費財、デジタルなど、あらゆる産業に及んでいます。長い目で見れば「公平で信頼できる市場」への大きな一歩ですが、短期的には行政手続きの遅延や業務の停滞といった影響も出ています。このレポートでは、その全体像と各業界への影響、そして移行期を乗り越えるためのビジネスの視点をお伝えします。



1|現状と背景:全産業におよぶ国家規模のクレンジング

ベトナムのトー・ラム指導体制のもと、国家の信用回復と市場健全化を掲げたかつてない規模のガバナンス改革が進められています。この動きは、知的財産権の保護、製品安全性の担保、および行政の透明化を目的に、製造・パッケージング、インフラ、流通、デジタルに至る「全産業・全セクター」を対象とした一斉インスペクション(立ち入り検査)と模倣品排除キャンペーンへと拡大しています。

2026年に入り、法規制の執行速度は過去最高レベルに達しており、「例外なき厳罰化」へと舵が切られています。


2|産業横断的な具体的事例と実務への影響

このガバナンス強化の波は、あらゆるセクターにおいて「長期的メリット(市場の健全化)」と「短期的課題(行政手続きの停滞)」という共通の現象をもたらしています。


ライフサイエンス・食品セクター(パッケージング・製造)

医薬品や健康食品・ヘルスケア分野の製造およびパッケージング工場に対し、当局による極めて厳格な一斉インスペクションが実施されています。原材料のトレーサビリティ(出所証明)や品質管理基準(GMP等)の適合性が厳しく審査されており、基準を満たさない生産ラインの一時停止処分や新政令に基づく厳しいスクリーニングが相次いでいます。


防災・建設・不動産セクター(設備ライセンス・建築承認)

最も顕著な行政の硬直化が見られるのが、消防関連設備・機材をはじめとする防災インフラおよび建設・不動産分野です。安全基準の法的な引き締め(改正消防法の運用など)に伴い、当局の「審査過誤による責任追及」への懸念から、許認可・承認プロセスが極めて慎重化しています。その結果、流通・販売許可や建築・施工承認の新規発行・更新手続きに数ヶ月単位の遅延が発生し、プロジェクト全体の進捗に影響が出ています。


小売・アパレル・一般消費財セクター(模倣品の徹底撲滅)

政府は市場の「浄化」を最優先課題とし、税関や市場監視総局による全国一斉の抜き打ち検査を強化しています。これまで実質的に黙認されていた出所不明の製品や模倣品が商業施設や国境で徹底的に排除されており、コンプライアンスを徹底してきた正規の事業者にとっては、不当な価格競争が解消されるという恩恵がもたらされています。


テクノロジー・デジタルセクター(海賊版・不正ライセンスの排除)

デジタル・IT分野でも同様のクレンジングが進んでいます。ソフトウェアの不正ライセンス利用や違法配信プラットフォームへの強制捜査・閉鎖処分が公安省主導で急増しているほか、改正知的財産法(2026年4月施行)により、産業用資材やテクノロジー分野におけるライセンス違反への罰則も大幅に引き上げられています。正規ライセンスで事業を展開してきた企業にとっては、不正な競合が排除されることで、より公平な競争環境が整いつつあります。


3|移行期を乗り越えるためのビジネスの視点

この「生みの苦しみ」とも言える過渡期において、以下のような視点を持っておくと、リスク管理や戦略構築に役立ちます。


「行政手続きの遅延」を前提とした事業計画の見直し

現在の遅延は特定の工場や業界固有の問題ではなく、行政システム全体の慎重姿勢によるものです。部材調達、ライセンス申請、輸出入にいたるすべてのタイムラインにおいて、数ヶ月単位のバッファをあらかじめ織り込んだスケジュール管理への見直しが、リスク軽減につながります。


コンプライアンス・エビデンスの事前整理

インスペクションやライセンス審査を円滑に通過するための大きな助けとなるのが、「透明性の証明」です。製造工程データ、原材料の調達ルート、知財証明など、自社のコンプライアンスに関するドキュメントをいつでも即座に提示できる状態に整えておくことが、スムーズな対応につながります。


「ポスト・クレンジング市場」を見据えた長期戦略

短期的には手続きの停滞という負の影響を受ける局面もありますが、模倣品や不正な競合事業者が市場から淘汰されたその先には、信頼性の高い正規の事業者だけが残る、より公平で有利な市場環境が到来します。この過渡期を、長期的なパートナーシップ構築や競争優位の確立に向けた好機として捉えることもできます。


4| 参考情報・情報元

ベトナム首相府公電(Official Telegram No. 38/CĐ-TTg)

2026年5月5日発令。トー・ラム書記長・首相主導による、国内最大規模の知的財産権侵害・模倣品撲滅の全国一斉キャンペーンの指示。各省庁に前年比20%以上の摘発・処分件数の増加という具体的な数値ノルマを課しています。 URL: https://vanban.chinhphu.vn/?pageid=27160&docid=217999


ベトナム国営英字紙(Vietnam News)/ベトナム政府公式情報サイト(Vietnam.vn)

2026年5月21日最新報道ほか。中央反汚職・無駄撲滅委員会における政府方針(Plan No. 03-KH/TW)を報道。役人の責任回避による行政手続きの遅延についても、2026年第2四半期中にボトルネックを解消するよう、政府が本格的な監査に乗り出している実態が報じられています。 URL(日本語): https://www.vietnam.vn/ja/ke-hoach-03-kh-tw-quyet-liet-phong-chong-tham-nhung-lang-phi


改正消防法および関連政令(Law No. 55/2024/QH15 / Decree No. 69/2026/ND-CP)

2026年4月20日最新罰則施行。消防関連設備・機材の設置基準および罰則の大幅な引き上げ。行政手続き厳格化の直接的な根拠となっています。 URL(日本語): https://www.vietnam.vn/ja/siet-chat-ky-cuong-phong-chay-chua-chay-nhung-diem-moi-quan-trong-trong-quy-dinh-xu-phat-hanh-chinh-theo-nghi-dinh-69-2026-nd-cp


ベトナムでの流通許可証について(Vietan Law)

ベトナム国内で製品を流通・販売するために必要な許可証の概要と取得プロセスを解説。行政手続き遅延の具体的な影響を理解するうえで参考になります。


ベトナムネット(Vietnamnet)/ベトナム政府公式情報サイト(Vietnam.vn)

米国がベトナムを「優先監視国」に指定したことを受け、ベトナム政府は知的財産権侵害に対するかつてない規模の国家的な一斉摘発キャンペーンを開始しました。これは単なる米国の要求への対応ではなく、AIや半導体などハイテク産業の誘致、国内スタートアップの保護に不可欠な「信頼性の高いサプライチェーン」への転換を急ぐ、ベトナムの新たな成長戦略とガバナンスのあり方を示しています。2026年4月1日施行の改正知的財産法により、産業用資材やテクノロジー分野におけるライセンス違反・模倣品への罰則も大幅に強化されています。URL (英語): https://vietnamnet.vn/en/tightening-ip-enforcement-vietnam-faces-new-enforcement-scenario-2514846.html


KBC-LINKでは引き続きベトナムの各産業における規制動向を注視し、皆さまのビジネスに役立つ情報をタイムリーに発信していきます。新たな動きがあれば随時お知らせしますので、ぜひ今後のレポートもご注目ください。


bottom of page